音楽理論はいらない?独学の壁を越えるために知っておきたい「音楽理論とは」の答え

音楽理論

「作曲を始めたけど、次の一歩が踏み出せない」「音楽理論って言葉は聞くけど、なんだか難しそうで何から手をつければいいかわからない…」と感じていませんか?あるいは、「米津玄師みたいな天才は感覚で曲を作っているはず。音楽理論はいらないんじゃないか?」という疑問や、「独学で学ぼうとしたけど挫折した」という苦い経験をお持ちかもしれません。その感覚、非常によくわかります。多くのクリエイターが同じ壁にぶつかっています。

しかし、その疑問を放置してしまうと、いつまでも「なんとなく」の作曲から抜け出せず、表現したいメロディやハーモニーが形にならないまま時間だけが過ぎていくかもしれません。「自分には才能がないのかも…」と、音楽そのものを楽しめなくなることさえあります。音楽理論は、一部の専門家だけのものではありません。むしろ、情熱はあるけれど進むべき道がわからない「凡人には必要」な、強力な羅針盤なのです。

ご安心ください。この記事では、音楽理論が「いらない」という誤解を解き、独学でも着実にスキルアップできる具体的な道筋を、誰にでもわかる簡単な言葉で徹底的に解説します。音楽理論とは何か、その本質から、学ぶメリット・デメリット、効率的な学ぶ順番まで、あなたの疑問を一つずつ解消していきます。

この記事で解説する方法は、音楽教室で教えられるカリキュラムの要点を抽出し、独学で実践できるように再構築したものです。音楽理論という「奥が深い」学問の地図を手に入れることで、あなたはこれまで感覚だけに頼っていた作曲から脱却し、意図的に心を動かす音楽を創造する力を手に入れることができるでしょう。

具体的には、「何から始めるべきか」という最初のステップから、挫折しないための簡単な入口、独学を支える参考本の選び方まで、具体的なアクションプランを提示します。さらに、独学と教室の比較や、習得にかかる時間の目安など、あなたが本当に知りたい情報だけを厳選しました。

もう遠回りは終わりです。この記事を最後まで読めば、「音楽理論はいらない」という迷いが消え、「独学でもやれる」という確信に変わるはず。さあ、一緒に音楽の新しい扉を開き、あなたの創造性を完全に解放する旅を始めましょう。


この記事でわかる4つのポイント

  • 音楽理論が「いらない」と言われる本当の理由と、それでも学ぶべきメリットが明確になる。
  • 独学で音楽理論を学ぶための具体的なステップと、挫折しないための学習の順番がわかる。
  • 自分に合った学習方法(独学・教室)や、独学を成功に導く具体的な音楽理論の参考本がわかる。
  • 音楽理論が、才能に関わらずあなたの音楽をどう進化させるかの答えが見つかる。

音楽理論とは?その必要性といらないと言われる理由

音楽理論とは?その必要性といらないと言われる理由
  • 音楽理論の学習は「何から?」始めるべきか
  • 挫折しないための「簡単」な入口とは
  • 遠回りしない、効率的な音楽理論の「学ぶ順番」
  • なぜ音楽理論は「奥が深い」と言われるのか
  • 音楽理論を学ぶことの具体的な「メリット」

音楽理論の学習は「何から?」始めるべきか

音楽理論の学習は「何から?」始めるべきか

音楽理論を学ぼうと決意したものの、その広大な世界を前に「一体、何から手をつければいいんだ…」と立ちすくんでしまう人は少なくありません。膨大な専門書やWebサイトを前にすると、まるで大海原に一人で放り出されたような心細さを感じるかもしれません。しかし、心配は無用です。全ての学問にそうであるように、音楽理論にもスタートに適した入口と、進むべき王道が存在します。結論から言えば、音楽理論の学習は「メジャースケール(長音階)」と「度数(ディグリー)」の理解から始めるのが最も効率的で、挫折しにくい方法です。

なぜなら、ポップスやロック、ジャズなど、私たちが普段耳にする多くの音楽は、このメジャースケールを土台として構築されているからです。メジャースケールは、いわば音楽の「アルファベット」のようなもの。これを理解しなければ、単語(コード)を覚えたり、文章(曲)を作ったりすることはできません。「ドレミファソラシド」というお馴染みの音階が、なぜ心地よく響くのか。その構造を理解することが、音楽理論という巨大な山を登るための最初の、そして最も重要な一歩となります。

具体的には、まずCメジャースケール(ハ長調)の「ドレミファソラシド」の音の並びと、各音の間隔(全音・半音)を徹底的に覚えることから始めましょう。ピアノの鍵盤を見れば一目瞭然ですが、「ミとファ」「シとド」の間には黒鍵がなく、ここが「半音」の関係になっています。この「全・全・半・全・全・全・半」という音の並びのパターンこそがメジャースケールの正体であり、このパターンを他の音からスタートさせることで、あらゆるキー(調)のメジャースケールを導き出すことができるのです。この基本構造を理解することが、コード理論やハーモニーの世界へ進むための揺ぎない土台となります。

挫折しないための「簡単」な入口とは

挫折しないための「簡単」な入口とは

音楽理論の学習で最も避けたいのは、初期段階での挫折です。多くの人が、いきなり分厚い理論書を読み始めたり、複雑な和声学に手を出したりして、「やっぱり自分には無理だ」と諦めてしまいます。そうならないための「簡単」な入口、それは**「自分の好きな曲を分析してみる」**という実践的なアプローチです。理論を理論として学ぶのではなく、自分が心から愛する音楽が「なぜ心地よいのか」「なぜ感動するのか」を解き明かすためのツールとして音楽理論を使うのです。

例えば、あなたが好きなJ-POPの曲があるとします。その曲のコード進行をインターネットで調べてみましょう。きっと「C→G→Am→F」のような、アルファベット記号の羅列が出てくるはずです。これがコードです。最初は意味がわからなくても構いません。次に、前のセクションで学んだCメジャースケールの知識を使ってみましょう。Cメジャースケールの音(ドレミファソラシド)を元に作られる基本的なコード(ダイアトニックコードと言います)を調べてみると、そこには「C」「G」「Am」「F」といった、あなたの好きな曲で使われているコードがほとんど含まれていることに気づくはずです。

この発見は、「あの名曲も、実は基本的な音楽理論のルールに則って作られていたんだ!」という驚きと感動をもたらします。この「わかった!」という瞬間こそが、学習を継続するための最高のモチベーションになります。難しい数式を解くように理論を学ぶのではなく、大好きなパズルを解き明かすような感覚で取り組むこと。これが、挫折せずに音楽理論と長く付き合っていくための、最も簡単で効果的な入口なのです。まずは1曲、お気に入りの楽曲のコード進行を調べて、ダイアトニックコードと見比べてみることから始めてみてください。

遠回りしない、効率的な音楽理論の「学ぶ順番」

遠回りしない、効率的な音楽理論の「学ぶ順番」

音楽理論を独学で進める上で、学習の順番は非常に重要です。正しい順序で学べば、知識がスムーズに繋がり、理解が加速しますが、順番を間違えると、一つ一つの知識がバラバラの点のままとなり、応用が利かずに挫折の原因となります。ここでは、多くの音楽教育の現場で採用されている、遠回りしないための最も効率的な「学ぶ順番」をロードマップとして示します。

この順番のポイントは、ミクロな要素からマクロな要素へ、そしてシンプルなルールから複雑なルールへと、段階的に知識を積み上げていく点にあります。このステップに従って学習を進めることで、知識が有機的に結びつき、「使えるスキル」として定着していくでしょう。

ステップ学習テーマ主な学習内容このステップのゴール
👟 STEP 1基礎の基礎・メジャースケール・音程(インターバル)音楽の「文字」と「距離感」を覚える
🏃 STEP 2コードの仕組み・3和音(メジャー/マイナー)・ダイアトニックコード曲の「単語」にあたるコードの作り方を理解する
STEP 3コード進行の役割・主要3和音(T/D/SD)・カデンツ(終止形)「単語」を繋げて自然な「文章」を作る方法を知る
🚀 STEP 4表現の幅を広げる・マイナースケール・ペンタトニックスケール明るい曲以外の「感情表現」の引き出しを増やす
🌌 STEP 5応用・発展・テンションコード・モード(旋法)などより複雑でオシャレな「プロの響き」に触れる

まずはSTEP1の「基礎の基礎」を完璧にすることから始めましょう。ここが全ての土台です。焦って次に進もうとせず、一つのステップを自分のものにしてから次のステップへ進むことが、結果的に最も早く、そして確実な上達への道となります。このロードマップをあなたの学習の羅針盤として活用してください。

なぜ音楽理論は「奥が深い」と言われるのか

なぜ音楽理論は「奥が深い」と言われるのか

音楽理論について少し調べ始めると、必ず「奥が深い」という言葉に出会います。この言葉は、学習者を惹きつける魅力的な響きを持つ一方で、その全貌の掴めなさから「自分には到底理解できないのではないか」という不安を煽る原因にもなっています。では、なぜ音楽理論は「奥が深い」のでしょうか。その理由は、大きく分けて二つあります。一つは「歴史的な積み重ねによる体系の広大さ」、もう一つは「感性と論理の相互作用」にあります。

まず、歴史的な側面についてです。現在私たちが学んでいる音楽理論は、一人の天才が発明したものではなく、何世紀にもわたる音楽の歴史の中で、数多くの作曲家や理論家たちが「心地よい響きとは何か」「感動的な音楽構造とは何か」を探求し、試行錯誤を重ねてきた知の結晶です。バロック時代の対位法、クラシック時代の機能和声、ジャズ時代のモード理論など、時代やジャンルごとに異なるアプローチが生まれ、それらが相互に影響を与えながら巨大な体系を形成してきました。そのため、基本的な和声学を学んだ先にも、さらに探求すべき広大な領域が広がっており、それが「奥深さ」の正体の一つとなっています。

もう一つの理由は、音楽理論が単なる数学的なルールではない点にあります。理論はあくまで「過去のヒット曲や名曲の法則性を分析し、体系化したもの」であり、絶対的な正解を示すものではありません。理論のルールを破ることで、かえって新鮮な驚きや感動が生まれることも多々あります。つまり、理論という論理的な骨格を理解した上で、最終的には自分の感性で「どの響きを選ぶか」を決定する必要があるのです。この論理と感性が行き来する創造的なプロセスこそが、音楽理論の最も面白く、そして「奥が深い」と言われる核心部分なのです。理論は音楽を縛るための鎖ではなく、あなたの感性をより自由に羽ばたかせるための翼であると理解することが重要です。

音楽理論を学ぶことの具体的な「メリット」

音楽理論を学ぶことの具体的な「メリット」

「音楽理論はいらない」という意見がある中で、それでも多くのプロのミュージシャンが理論を学んでいるのはなぜでしょうか。それは、感覚だけでは到達できない領域へ導いてくれる、計り知れないメリットがあるからです。音楽理論を学ぶことは、あなたの音楽活動全般において、強力な武器となります。ここでは、その具体的なメリットを掘り下げていきましょう。

最大のメリットは、**「作曲やアレンジの効率とクオリティが飛躍的に向上する」**ことです。感覚だけに頼った作曲では、メロディが浮かんでも、それに合うコードがなかなか見つからなかったり、いつも同じようなコード進行になってしまったりと、行き当たりばったりになりがちです。しかし、理論を学べば、「このメロディには、こんなコードが響きやすい」「この感情を表現するには、このスケールが使える」といったように、膨大な選択肢の中から最適な答えを論理的に導き出せるようになります。これは、闇雲に宝物を探すのではなく、宝の地図を手に入れて探索するようなものです。作業時間が短縮されるだけでなく、これまで思いもよらなかったようなアイデアが生まれ、作品のクオリティが格段に向上するでしょう。

さらに、「他のミュージシャンとのコミュニケーションが円滑になる」というメリットも見逃せません。バンドでセッションをする際や、共同でアレンジ作業を行う際に、「そこのコード、もっとフワフワした感じで」といった曖昧な表現ではなく、「そこのCmaj7をCmaj9に変えてみよう」といったように、音楽理論という世界共通言語で的確に意図を伝えることができます。これにより、イメージの共有がスムーズになり、より高度で一体感のあるアンサンブルを生み出すことが可能になります。音楽理論は、あなたの頭の中にある漠然としたイメージを、他者と共有可能な具体的な形へと変換してくれる、優れた翻訳ツールでもあるのです。

音楽理論の独学を始める前に|挫折しないための学び方

音楽理論の独学を始める前に|挫折しないための学び方
  • 音楽理論は不要?学習の「デメリット」を考える
  • 独学を強力にサポートする音楽理論の「参考本」【新版】
  • 「米津玄師」は知らない?天才と音楽理論の関係性
  • 「凡人には必要?」音楽理論が創作の武器になる理由
  • 音楽理論の「独学」と「教室」はどちらを選ぶべきか
  • 習得にかかる「時間」の目安はどれくらい?
  • 結論:音楽理論は「いらない」?「独学」で「音楽理論とは」の答えを探求する道

音楽理論は不要?学習の「デメリット」を考える

音楽理論は不要?学習の「デメリット」を考える

音楽理論を学ぶメリットを強調してきましたが、物事には必ず両面があります。「音楽理論はいらない」という意見が根強く存在するのは、確かに学習に伴うデメリットや注意点があるからです。これらを事前に理解しておくことは、理論に振り回されず、むしろ理論を有効なツールとして使いこなすために非常に重要です。

最もよく指摘されるデメリットは、「理論に縛られて自由な発想が失われる危険性がある」ことです。特に、学び始めの段階で理論を絶対的なルールだと誤解してしまうと、「このコード進行は理論的に間違っているから使えない」「このメディはスケールから外れているからダメだ」というように、自ら創造性の枷をはめてしまうことがあります。

音楽の歴史は、既存の理論を打ち破ることで進化してきました。理論はあくまで過去のデータの蓄積であり、未来の創造性を保証するものではありません。理論の知識が、かえってあなたの頭を固くし、大胆なアイデアを萎縮させてしまう可能性があることは、最大のデメリットと言えるでしょう。

もう一つのデメリットは、「習得にある程度の時間と労力がかかる」という現実的な問題です。前述の通り、音楽理論は奥が深く、その体系は広大です。基本的な知識を身につけるだけでも、継続的な学習が必要となります。すぐに曲を作りたい、すぐに結果を出したいと考えている人にとっては、この地道な学習プロセスが苦痛に感じられるかもしれません。

貴重な練習時間を、理論の勉強に費やすことへの抵抗感もあるでしょう。これらのデメリットを理解した上で、それでも理論を学ぶ価値があるのかどうかを自分自身で判断する必要があります。

比較する側面👍 メリット (得られること)⚠️ デメリット (注意点)
創造性表現の選択肢が爆発的に増え、アイデアの引き出しが多くなる。ルールに縛られ、自由な発想が生まれにくくなる可能性がある。
効率性作曲やアレンジのスピードと質が向上し、時間短縮になる。体系的な理解には、ある程度の学習時間と努力が必要になる。
再現性感覚で作ったものを論理的に分析・応用できるようになる。頭でっかちになり、音楽の感覚的な楽しさが薄れると感じる人も。
協調性ミュージシャン同士の共通言語となり、意思疎通がスムーズになる。知識がコミュニケーションの壁になることも稀にある。

この表を見てわかる通り、メリットとデメリットは表裏一体です。重要なのは、理論を「絶対的な規則」ではなく「便利な道具箱」と捉え、最終的な判断は常に自分の耳と感性に委ねるという姿勢を忘れないことです。

独学を強力にサポートする音楽理論の「参考本」【新版】

独学を強力にサポートする音楽理論の「参考本」【新版】

独学で音楽理論を学ぶ上で、信頼できる「参考本」は、あなたの旅を導いてくれる最高の相棒になります。ここでは、音楽の基礎体力をつけるための、より本格的で評価の定まっている「音楽理論書」をレベル別に3冊厳選してご紹介します。

1, 『できるゼロからはじめる楽典超入門いちばんやさしい音楽理論の本』(シンコーミュージック)

「理論書」という言葉に抵抗がある方でも、この本なら安心して読み進められます。会話形式と豊富なイラストで、難しい専門用語を使わずに音楽理論の全体像を楽しく学べるように工夫されています。音符の読み方といった初歩の初歩から、スケールやコードの基本的な仕組みまでを網羅しており、「なぜそうなるのか?」という理屈を理解しながら読み進められます。独学の最初の1冊として、これ以上ないほど最適な入門書です。

こんな人におすすめ

  • 活字や五線譜が苦手で、まずは理論に慣れたい方
  • 過去に理論学習で挫折した経験がある方
  • 音楽理論の楽しさを最初に知りたい方

『できるゼロからはじめる楽典超入門―いちばんやさしい音楽理論の本』(シンコーミュージック)

2, 『楽典 理論と実習』(音楽之友社)

音楽を専門的に学ぶ人の間では「黄色い楽典(黄楽典)」として知られ、数十年にわたり読み継がれてきた、まさに音楽理論のバイブルです。音、リズム、旋律、和音など、音楽を構成する全ての要素を体系的かつ網羅的に解説しており、この一冊をマスターすれば、音楽理論の基礎知識で困ることはなくなるでしょう。内容はアカデミックで硬派ですが、その分、情報の信頼性と網羅性は随一です。

こんな人におすすめ

  • 入門書を終え、本格的に理論を学びたい方
  • 音楽大学の受験や、プロを目指している方
  • 辞書のように長く使える、信頼できる一冊が欲しい方

『楽典理論と実習』(音楽之友社)

3, 『ポピュラー音楽理論』(北川 

クラシック音楽をベースにした伝統的な楽典だけでなく、J-POPやロック、ジャズなど、現代のポピュラー音楽で使われる実践的な理論を学びたい方に最適な一冊です。基本的な楽典の知識を前提としつつ、ポピュラー音楽特有のコード進行やアレンジ手法、スケールの使い方などを詳しく解説しています。学んだ知識をすぐに作曲やアレンジに活かしたいと考えているなら、必ず役立つでしょう。「黄楽典」とあわせて読むことで、理論と実践の両輪をバランス良く鍛えることができます。

こんな人におすすめ

  • 楽典の基礎知識を、現代の音楽制作に活かしたい方
  • 作曲やアレンジの引き出しを具体的に増やしたい方
  • J-POPやロックなどの楽曲分析を深く行いたい方

自分に合ったレベルの本から始めることが、独学を成功させる最も重要な鍵です。ぜひ書店で実際に手に取り、内容を比較検討してみてください。

『ポピュラー音楽理論』(北川 祐)

「米津玄師」は知らない?天才と音楽理論の関係性

「米津玄師」は知らない?天才と音楽理論の関係性

「音楽理論はいらない」という意見の根拠として、しばしば「米津玄師のような天才は、理論なんて知らずに感覚だけで作っているはずだ」という声が聞かれます。確かに、彼の生み出す楽曲は独創的で、既存の枠に収まらない自由な発想に満ちています。

しかし、その音楽を注意深く分析すると、実は非常に巧みで洗練された音楽理論の技法が随所に散りばめられていることに気づきます。天才と呼ばれるアーティストたちが、本当に音楽理論を「知らない」のでしょうか。

結論から言うと、その可能性は極めて低いと言えます。彼らが公の場で「理論は勉強していない」と語ることがあったとしても、それは二つの意味合いに捉えることができます。一つは、いわゆる学校の教科書的な学び方をしていないだけで、膨大な量の音楽を聴き、コピーし、分析する過程で、結果的に理論を「体で覚えている」というケース。

彼らは、コードの名前や理論的な背景を知らなくても、「この響きの次には、この響きが来ると気持ちいい」という法則性を、経験則として無数にストックしているのです。これは、理論を知らないのではなく、むしろ理論が血肉と化している状態と言えるでしょう。

もう一つは、理論を学んだ上で、あえて「理論から自由になっている」というステージにいるケースです。これは、武道の達人が「型」を徹底的に学んだ上で、最終的に「型のない」自由な動きに到達するのと同じです。彼らは理論という地図を持っているからこそ、安心して道なき道を進み、時には意図的に道を外れてリスナーを驚かせることができるのです。

米津玄師の楽曲に見られるような、予想を裏切る美しい転調や、独特な浮遊感を持つコード進行は、まさに高度な理論的裏付けがあって初めて可能になる表現です。天才たちの音楽は、理論を無視しているのではなく、理論を完全に消化し、自分の表現の道具として自在に使いこなした結果、生まれてくるものなのです。

「凡人には必要?」音楽理論が創作の武器になる理由

「凡人には必要?」音楽理論が創作の武器になる理由

「天才は理論を超越するかもしれない。でも、自分のような凡人には、音楽理論は本当に必要なのだろうか?」この問いは、多くの音楽愛好家が抱く、切実な悩みかもしれません。むしろ、この問いに対する答えは明確です。「天才ではないと自覚している人ほど、音楽理論は強力な武器になる」のです。なぜなら、音楽理論は、天賦の才に恵まれなかったとしても、努力と知識で音楽のクオリティを確実に引き上げてくれる、最も公平で再現性の高いツールだからです。

感覚やひらめきだけに頼った作曲は、才能のある人間にとっては有効な手段かもしれません。しかし、多くの凡人にとっては、その「ひらめき」は毎日訪れてくれるわけではありません。アイデアが枯渇し、何も生み出せないスランプに陥ることもあります。そんな時、音楽理論はあなたを救う羅針盤となります。

例えば、「感動的なサビを作りたい」と考えた時に、理論を知っていれば「サブドミナントマイナーを使ってみよう」「偽終止で期待を裏切ってみよう」といったように、具体的な解決策の引き出しを無数に持つことができます。これは、才能という名の「運」に頼るのではなく、知識という名の「実力」で創作活動を前に進める力になります。

さらに、音楽理論はあなたの「好き」という感覚を、より深く、より鋭敏にしてくれます。今まで何となく「良い曲だな」と感じていた音楽が、理論を学ぶことで「なるほど、ここでこのコードを使うから、こんなに切なく聴こえるのか!」と、その仕組みを論理的に理解できるようになります。この理解は、他人の作品から優れたテクニックを学び、自分の作品に応用する能力、すなわち「盗む」スキルを格段に向上させます。

凡人が非凡な作品を生み出すためには、偉大な先人たちの知恵を学び、それを自分なりに消化・応用することが不可欠です。音楽理論は、そのための最も効果的な学習ツールであり、あなたの音楽的成長を加速させる強力なエンジンとなるのです。

音楽理論の「独学」と「教室」はどちらを選ぶべきか

音楽理論の「独学」と「教室」はどちらを選ぶべきか

音楽理論を学ぶ決心がついた時、次に考えるべきは「どのように学ぶか」という方法論です。主な選択肢として「独学」と「音楽教室」がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが最適かは、あなたの性格や目的、ライフスタイルによって大きく異なります。ここでは両者を比較し、あなたが最適な選択をするための判断材料を提供します。

独学の最大のメリットは、「費用を抑えられ、自分のペースで学習を進められる」点です。参考書やオンライン教材にかかる費用のみで、時間や場所に縛られることなく、好きな時に好きなだけ学習できます。仕事や学業で忙しい人や、特定の分野だけを集中的に学びたい人にとっては、この自由度の高さは非常に魅力的です。

しかし、その反面、「モチベーションの維持が難しく、疑問点をすぐに解決できない」というデメリットがあります。明確なカリキュラムがないため、何をどの順番で学ぶべきか迷いやすく、壁にぶつかった時に質問できる相手がいないため、挫折しやすい傾向にあります。

一方、音楽教室の最大のメリットは、「体系的なカリキュラムに沿って、専門家から直接指導を受けられる」点です。経験豊富な講師が、あなたのレベルや目標に合わせて最適な学習プランを提示してくれます。分からないことがあればその場で質問でき、的確なフィードバックをもらえるため、効率的に、そして正しく知識を身につけることができます。

また、レッスンという強制力が働くため、モチベーションを維持しやすいのも大きな利点です。デメリットは、当然ながら「レッスン料というコストがかかる」ことと、「決められた日時に通う必要がある」という時間的な制約です。

比較項目🧑‍💻 独学🏫 音楽教室
💰 費用◎ (安価) 教材費のみで始められる△ (高価) 継続的に月謝が必要
時間・ペース◎ (自由) 好きな時に好きなだけ学べる△ (不自由) 決まった日時に通う必要あり
🧠 学習効率△ (自己管理次第) 遠回りする可能性あり◎ (効率的) 最適なカリキュラムで学べる
疑問の解決× (困難) 自力で調べるしかない◎ (簡単) 講師にその場で質問できる
🔥 モチベーション△ (維持が難しい) 強い意志が必要○ (維持しやすい) レッスンが良いペースになる

結論として、強い自己管理能力があり、コストを抑えたい人は「独学」から始めてみるのが良いでしょう。一方で、最短距離で確実にスキルを身につけたい人や、一人では学習を続けられる自信がない人は、「音楽教室」(筆者おすすめスクールのシアーミュージック)への投資を検討する価値が大いにあります。

DTMシアーミュージック講師
シアーミュージックには、あの「しらスタ」さんも在籍

習得にかかる「時間」の目安はどれくらい?

習得にかかる「時間」の目安はどれくらい?

音楽理論の学習を始めるにあたり、「一人前になるまでに、一体どれくらいの時間がかかるのだろう?」という疑問は、学習計画を立てる上で非常に重要です。もちろん、個人の才能や学習に割ける時間、そして「どこまでを習得目標とするか」によって必要な時間は大きく異なりますが、ここでは具体的な目標レベルに応じた学習時間の目安を示します。

まず、**「J-POPなどのコード譜を見て、ある程度コード進行の役割が理解できる」**レベルを目標とする場合、毎日1時間の学習を継続して、およそ3ヶ月〜半年が一つの目安となります。このレベルでは、メジャースケールとマイナースケール、ダイアトニックコード、そして主要三和音(トニック・ドミナント・サブドミナント)の機能といった、音楽理論の最も基本的な骨格を理解することが中心となります。この段階をクリアするだけでも、今までとは比べ物にならないほど楽曲への解像度が上がり、簡単な作曲や耳コピが格段に楽になることを実感できるでしょう。独学でも、質の良い教本を一冊しっかりとやり遂げれば、十分に到達可能なレベルです。

次に、**「簡単な楽曲のアレンジや、アドリブ演奏の基礎を身につけたい」**という、より実践的なレベルを目指す場合は、1年〜2年程度の継続的な学習が必要になるでしょう。この段階では、基本的な理論に加え、セカンダリードミナントやツーファイブ、各種テンションコード、モード(旋法)といった、より複雑で表現力豊かなサウンドを生み出すための発展的な理論を学ぶ必要があります。理論の理解だけでなく、それを実際に楽器で弾き、自分のものとして使いこなすための実践練習にも多くの時間を割くことになります。

最終的に、**「ジャズやフュージョンのような複雑なハーモニーを自在に操り、プロレベルの作編曲を目指す」**のであれば、3年以上の専門的な学習と、終わりなき探求が必要となります。音楽理論の世界は非常に奥が深く、トッププロの多くは生涯をかけて学び続けています。重要なのは、焦らずに自分のペースで、着実に知識を積み上げていくことです。まずは最初の目標である「3ヶ月」をクリアすることを目指して、学習をスタートさせてみてはいかがでしょうか。

結論:音楽理論は「いらない」?「独学」で「音楽理論とは」の答えを探求する道

結論:音楽理論は「いらない」?「独学」で「音楽理論とは」の答えを探求する道

この記事を通して、「音楽理論とは何か」、そして「いらない」という言葉の真意について、多角的に掘り下げてきました。最終的な結論として、私たちは何を学び取ることができるのでしょうか。音楽の世界をより深く、より自由に楽しむための道筋を、10のポイントでまとめます。

  • 1. 音楽理論は「ルール」ではなく「地図」である 音楽を縛るための規則ではなく、あなたが音楽のどこにいるのか、どこへ行けるのかを示す便利な道具です。
  • 2. 「いらない」は「理論に縛られるな」という意味 理論を知らない方が良いという意味ではなく、理論を学んだ上で、最終的には自分の感性を信じることの重要性を示唆しています。
  • 3. 独学は可能だが、正しい「学ぶ順番」が鍵 「スケール→コード→コード進行」という王道のステップを守ることが、挫折を防ぎ、効率的な学習を実現します。
  • 4. 最初の目標は「好きな曲の分析」 理論を実践に結びつけ、「わかった!」という喜びを感じることが、モチベーション維持の秘訣です。
  • 5. 天才も理論の土台の上に立っている 米津玄師のようなアーティストの独創性も、多くは理論を消化し、超越した先にある表現です。
  • 6. 凡人こそ音楽理論を「武器」にすべき 才能やひらめきという不確かなものではなく、知識と論理で創作のクオリティを安定して向上させることができます。
  • 7. メリットとデメリットは表裏一体 頭でっかちになる危険性を理解し、常に自分の耳で判断する姿勢を忘れないことが重要です。
  • 8. 独学と教室は目的に応じて選ぶ コストと自由度を優先するなら独学、効率と確実性を求めるなら教室という選択肢があります。
  • 9. 学習時間の目安はまず「3ヶ月」 基本的なコード理論を理解するだけでも、あなたの音楽は劇的に変化します。焦らず、着実にステップアップを目指しましょう。
  • 10. 最終的な「音楽理論とは」の答えは、あなた自身の中にある 理論の学習を通して、あなたがどんな音楽を美しいと感じ、何を表現したいのか。それを探求するプロセスそのものが、音楽理論を学ぶ本当の価値なのです。「音楽理論はいらない」という他人の言葉に惑わされず、まずはあなた自身の独学の旅を始めてみてください。その先には、今まで見たことのない、広大で自由な音楽の世界が広がっているはずです。