其の三 DTMモニターヘッドフォンの選び方とおすすめモデル5選

DTMモニターヘッドフォンの選び方とおすすめモデル5選

DTMにモニターヘッドフォンは必須!パソコンとDAWだけでは音が正確に聴けない理由

DTM(デスクトップミュージック)をこれから始める人にとって、「ノートパソコンDAWソフトがあれば作曲できる!」というのは事実です。しかし、もう一つ大事なポイントを見落としてはいけません。 それは、正しい音で聴くための環境です。 初心者の多くはパソコンの内蔵スピーカーで音を確認してしまいますが、これは非常に危険

パソコン内蔵スピーカーじゃ話にならない

なぜなら、内蔵スピーカーはサイズも小さく、再生できる音域も限られており、低音も高音もバランスが崩れて聴こえてしまうからです。 その結果、「良い曲ができたと思ったら、スマホで聴くと全然違う音になっていた」ということが頻繁に起こります。

そこで必要になるのが、DTM専用のモニターヘッドフォンです。正確な音を聴けることで、作曲・ミックスの質が劇的に向上します。

初心者のうちから耳を鍛えるべき

特に初心者のうちは音の違いに気づきにくいため、耳を育てる意味でもモニターヘッドフォンは重要なアイテムです。 さらに、夜中に作業する場合はスピーカーを使うと家族や近隣に迷惑がかかることも。モニターヘッドフォンなら、周囲を気にせず集中できます。

DTM初心者向けモニターヘッドフォンの選び方|リスニング用との違いを知ろう

リスニングヘッドフォンとは?

普段私たちが音楽を楽しむために使うリスニング用ヘッドフォン。実は、低音を強調したり、高音を華やかにしたりと、「音楽を気持ちよく楽しむ」ことに重点を置いています。知っていましたか?

モニターヘッドフォンとは?

モニターヘッドフォンは「正確に音が聞こえる」ことを最も重視します。ミックス作業では、各楽器やボーカルの音量、定位、エフェクトのかかり具合など、細かなバランスを調整する必要があります。このとき、再生音に色付けがあると、本来の音と異なる判断をしてしまい、結果的に不自然な仕上がりになってしまうからです。

フラットな音質は、正しい判断を可能にし、楽曲の完成度を高めるために不可欠なのです。

DTM初心者向けモニターヘッドフォンの選び方|リスニング用との違いを知ろう

DTMモニターヘッドフォンには、装着方式2種類と音響的構造2種類がある

モニターヘッドフォンは、大きく分けて装着方式と音響的な構造の2つの観点から分類できます。

装着方式による分類

ヘッドフォンが耳にどのようにフィットするかによって、音の聴こえ方や快適性が異なります。

オーバーイヤー型(アラウンドイヤー型)
  • 耳全体を覆うようにイヤーパッドが設計されており、比較的大きなハウジングが特徴です。
  • メリット: イヤーパッドが耳の周囲に密着することで、高い遮音性を実現しやすく、外部の音を遮断して音楽に集中できます。また、耳への圧迫が少ないため、長時間の使用でも疲れにくい傾向があります。
  • デメリット: サイズが大きめであるため、携帯性には劣ります。
オーバーイヤー型(アラウンドイヤー型)
オーバーイヤー型(アラウンドイヤー型) イメージ
オンイヤー型(Supra-aural型)
  • イヤーパッドが耳の上に直接乗るように設計されています。オーバーイヤー型よりも小型で軽量なものが多いです。
  • メリット: コンパクトで持ち運びやすく、カジュアルな使用に適しています。オーバーイヤー型に比べて、周囲の音も適度に聞こえるため、作業中に周りの状況を把握しやすい場合があります
  • デメリット: 耳への直接的な圧迫があるため、人によっては長時間の使用で耳が痛くなることがあります。また、遮音性はオーバーイヤー型に比べて劣る傾向があります。
オンイヤー型(Supra-aural型)
オンイヤー型(Supra-aural型) イメージ

音響的構造による分類

密閉型(クローズドバック)
  • 特徴: 外部の音を遮断し、音漏れを防ぎます。音が耳の中に閉じ込められるため、細かいノイズや音量の微調整に向いています。家庭での作業や録音ブース内での使用に最適です。
  • メリット: 遮音性が高く、周囲を気にせず作業できます。録音時のマイクへの音漏れも防げます。
  • デメリット: 音の広がり(音場)がやや狭く感じることがあります。
密閉型(クローズドバック)
密閉型(クローズドバック)イメージ
開放型(オープンバック)
  • 特徴: 背面が開いており、空気が抜けることで広がりのあるサウンドが特徴です。音場が広く、自然な音の定位や奥行きを感じやすいです。繊細なミックスやリバーブの確認に適しています。
  • メリット: 音の立体感や空気感がわかりやすく、耳が疲れにくいです。
  • デメリット: 音漏れが大きく、周囲に音が筒抜けになるため、静かな環境での使用が前提となります。
開放型(オープンバック)
開放型(オープンバック)イメージ
半開放型(セミオープン型)
  • 特徴: 密閉型と開放型の中間的な特性を持つタイプです。ハウジングに小さな穴やスリットがあり、密閉型よりも音抜けが良く、開放型ほど音漏れがないのが特徴です。音場の広がりと遮音性のバランスが良く、長時間作業での聴き疲れも少ない傾向にあります。
  • メリット: 密閉型の遮音性と開放型の自然な音場感を両立します。耳が疲れにくく、長時間の作業に適しています。
  • デメリット: 密閉型ほどの完璧な遮音性や、開放型ほどの広大な音場は期待できません。
半開放型(セミオープン型)
半開放型(セミオープン型)イメージ

【2025年最新】DTM初心者におすすめ!定番モニターヘッドフォン5選

ここでは、DTM初心者の方にもおすすめできる、実績と人気の高いモニターヘッドフォンを5つご紹介します。

日本の音楽スタジオで圧倒的な信頼を得ている超定番モデルです。再生周波数帯域が広く、解像度の高いモニタリングが可能です。ミックス作業に最適で、多くのプロが使用しています。 「まずこれを買えば間違いない」と言われるほどの信頼性があり、耐久性も高く長く使えるでしょう。

SONY MDR-CD900ST

■ タイプ    :密閉型(クローズドバック)

■ 装着方式   :オーバーイヤー(耳を覆う)

■ 周波数特性  :5Hz~30kHz

■ インピーダンス:63Ω

■ 感度     :106dB/mW

■ ケーブル   :ストレート(固定)

■ 重量     :約200g(ケーブル除く)

■ 特徴     :超フラットな音質、業務用スタジオでの定番

■ 用途     :ミックス、録音、編集全般に対応

■ 初心者おすすめ:★★★★☆

■ メモ     :「迷ったらこれ」で通じる信頼の一本

業務用スタジオの絶対的スタンダード

世界中のDTMユーザーに人気の高い、コストパフォーマンスに優れたモデルです。低音から高音までのバランスが良く、リファレンス用としても優秀です。折りたたみ可能で持ち運びもしやすい点が魅力。 音質・価格・装着感のバランスが非常に良く、初心者から上級者まで使える万能モデルと言えます。

Audio-Technica ATH-M50x

■ タイプ    :密閉型

■ 装着方式   :オーバーイヤー

■ 周波数特性  :15Hz~28kHz

■ インピーダンス:38Ω

■ 感度     :99dB

■ ケーブル   :着脱式(3本付属:カール/短/長)

■ 重量     :約285g(ケーブル除く)

■ 特徴     :バランス◎、折りたたみ対応で携帯性も高い

■ 向いている用途:ミックス、録音、ポータブル制作

■ 初心者適正度 :★★★★★

■ メモ     :初めてでも末永く使える優等生モデル

世界中で使われる万能モデル

DJやライブ現場でも活躍する高感度なヘッドフォンです。軽量でフィット感があり、長時間の作業にも向いています。高い遮音性が魅力。 外音をしっかり遮断し、ノイズのチェックやレコーディング用途に強いです。

Sennheiser HD25

■ タイプ    :密閉型

■ 装着方式   :オンイヤー

■ 周波数特性  :16Hz~22kHz

■ インピーダンス:70Ω

■ 感度     :120dB

■ ケーブル   :片出し固定式

■ 重量     :約140g

■ 特徴     :遮音性抜群、軽量で長時間使用にも

■ 向いている用途:録音、ノイズチェック、ライブ現場

■ 初心者適正度 :★★★☆☆

■ メモ     :小型ながらプロ現場で高評価

遮音性に優れた軽量モニター

音場が非常に広く、ミックスやマスタリング向きのモデルです。開放型の中でも音の解像度が高く、繊細な表現に優れています。着脱式ケーブルとベロア製イヤーパッドで高級感もあります。 自宅スタジオで集中してミックスを行う中上級者におすすめです。臨場感のある音で作業の精度が向上するでしょう。

AKG K702 Y3

■ タイプ    :開放型(オープンバック)

■ 装着方式   :オーバーイヤー

■ 周波数特性  :10Hz~39.8kHz

■ インピーダンス:62Ω

■ 感度     :105dB SPL/V

■ ケーブル   :着脱式(ミニXLR端子)

■ 重量     :約235g

■ 特徴     :広い音場と定位感、繊細な音表現

■ 向いている用途:ミックス、マスタリング

■ 初心者適正度 :★★★★☆

■ メモ     :静かな作業環境で力を発揮

開放型の高解像度リファレンス機

サウンドハウスが提供するコストパフォーマンス最強のモデルです。初めてのDTMヘッドフォンとして最適で、実売価格が手頃ながら、解像度が高く疲れにくい設計がされています。 とにかくコストを抑えたい初心者にうってつけのモデルです。価格以上のクオリティで入門用に最適と言えます。

CLASSIC PRO CPH7000

■ タイプ    :密閉型

■ 装着方式   :オーバーイヤー

■ 周波数特性  :10Hz~30kHz

■ インピーダンス:64Ω

■ 感度     :非公表(実用上問題なし)

■ ケーブル   :固定式(3m)

■ 重量     :約250g

■ 特徴     :初心者向けの超低価格、基本性能は十分

■ 向いている用途:DTM入門、学習用、予備機

■ 初心者適正度 :★★★★★

■ メモ     :とにかく安く始めたいならコレ一択

価格破壊の高コスパ密閉型

CLASSIC PRO CPH7000に決めた理由

筆者が初めて購入したDTM用モニターヘッドフォンは「CLASSIC PRO CPH7000」でした。サウンドハウスの口コミ評価の高さと、配送・サポートの対応の早さが購入の決め手でした。実際に装着して音を聴いた瞬間、「あれ?今まで聴いていた音は何だったの?」と感じるほど、細かい音の粒や残響が明確に聴こえるようになりました。モニターヘッドフォンを使うだけでDTMのレベルが一段階上がった感覚があり、価格も手頃でDTM初心者には文句なしの入門機だと感じました。

まとめ:DTMモニターヘッドフォンで音楽制作の質を上げよう!

DTMにおいて、ノートパソコンとDAWソフトだけでは正確な音を聴くことが難しく、楽曲の完成度が下がってしまう可能性があります。

  • DTMでは、リスニング用ヘッドフォンではなく、「音の正確さ」を追求したフラットな音質のモニターヘッドフォンが必要です。
  • 密閉型、開放型、半開放型の3種類の構造の違いを理解し、自身の用途や作業環境に合わせて最適なものを選びましょう。
  • 今回ご紹介したSONY MDR-CD900ST、Audio-Technica ATH-M50x、Sennheiser HD25、AKG K702、CLASSIC PRO CPH7000は、いずれも高い評価を得ている定番モデルです。
  • 特にDTM初心者の場合は、コストパフォーマンスに優れたCLASSIC PRO CPH7000からスタートするのがおすすめです。 正確なモニター環境を整えることで、あなたの音楽制作の質は劇的に向上するでしょう。

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